砂川昇健の人生論:~倒産と吸収合併がもたらす挫折~

~ 第5回:倒産と吸収合併がもたらす挫折 ― 変化を受け入れ、執着を手放す仏教の智慧 ~

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挫折

傭車を中心に順調に営業を続けていたのですが、なんと、この運送会社が倒産してしまいました。専用端末を売っていた私たちの事業にとって、これは大きな打撃でした。売る商品がなくなり、途方に暮れる状況に追い込まれました。

そこで私は「複数業者対応荷主端末」を開発するよう兄に依頼しました。社内では「そんなものが本当に売れるのか」と大きな議論が巻き起こりましたが、私は勝算がありました。ドライバーの助手席に乗って飛び込み営業を続ける中で、意外にも「複数業者対応」の端末なら購入したいという荷主が少なくないことに気付いていたからです。

完成した「複数業者対応端末」を手に、私はすぐに営業を開始しました。また「転リース」という設置契約でリースを組める方式を採用し、販売数を伸ばしていきました。うまくいくときは驚くほど順調に進むもので、中堅の運送会社からも100台ほどの受注を受けるなど、この端末はヒット商品となりました。

しかし、兄の会社の営業スタイルは私たちのような飛び込み営業ではありませんでした。その結果、次第に東京での営業活動が中心となり、最終的には全員が東京に移り住むようになりました。そして、私の会社は兄の会社に吸収合併されることになったのです。

私は「社長」から「支社長」、さらには「支店長」へと次第に役職が格下げされ、経営ビジョンや営業戦略をめぐる確執も広がりました。そして最終的に、私は会社を去る決断をしたのです。

「良い事と悪い事は一緒にやってくる」──私は、マンションの一室で男泣きしていました。

泣く男性の写真
マンションの一室で男泣き

仏教との響き合い

私の経験は、「挫折」というテーマを通じて仏教の教えと深く響き合います。

無常

仏教の中心的な教えである「無常」は、すべてのものが変化し続け、固定されたものは何もないと説きます。この物語において、順調だった事業が突然の運送会社の倒産によって暗転し、次に「複数業者対応端末」の開発で成功を収めたかと思えば、最終的には会社を去るという転機を迎えています。これらの経験は、人生のあらゆる事柄が常に移ろいゆくことを教えています。無常を理解することは、成功や失敗に囚われすぎず、柔軟に次の行動を選ぶ力を育みます。この教えは、「変化が不可避であるなら、その変化にどう向き合うかが重要だ」という示唆を与えてくれます。

因果の法則

仏教の「因果の法則」は、すべての結果には原因と条件があることを示しています。この物語では、運送会社の倒産や役職の降格といった挫折の「結果」も、さまざまな「因」(選択や行動)と「縁」(環境や他者の行動)が組み合わさったものです。この視点を持つと、挫折そのものを過剰に恐れる必要はなく、それを生み出した原因を振り返り、未来に向けて新たな行動を選ぶ糧とすることができます。仏教的には、「挫折は学びの種であり、次の因を整えるためのきっかけ」と捉えられます。

中道

仏教の「中道」は、極端な行動や考えを避け、バランスの取れた道を歩むことを説きます。この物語では、独立しての成功や吸収合併後の挫折など、両極端な経験が描かれています。中道の教えに照らせば、成功に過剰な期待を抱いたり、失敗に囚われすぎたりするのではなく、冷静に物事を判断し、柔軟に対応することが求められます。

執着を手放す

仏教は苦しみの根源として「執着」を挙げています。社長としての地位や過去の成功への執着は、会社の吸収合併後に苦しみを生む要因となったかもしれません。しかし最終的に会社を去るという決断は、その執着を手放し、新たな道を切り開く一歩として重要な意味を持ちます。執着を手放すことは、自由な心を得るための鍵であり、新たな可能性を見つける助けとなります。

挫折を経験しながらも、その中から学びを得て次の道を切り開くという人生の真実を語っています。仏教の「無常」「因果の法則」「中道」「執着を手放す」という教えは、この物語をより深く理解するための指針を与えてくれます。挫折は終わりではなく、次の可能性への扉です。その扉を開く鍵は、変化を受け入れ、執着を手放し、学びを未来へと活かすことにあります。この教えを心に刻むことで、どのような状況にも前向きに向き合う力を得られるでしょう。(続く)

開く扉の写真
挫折は次の可能性への扉である
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著者プロフィール
砂川 昇健(すなかわ しょうけん)
沖縄県石垣市出身。高校を卒業してすぐに上京し、「一旗揚げるまでは帰らないぞ」と誓い、様々な職を経験した後、1998年7月24日に株式会社システムアートを設立。以降、現在まで代表を務める。
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